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「ベンチャー企業でも簡単にできる 人事データを活用した組織・個人の可視化・活性化」

井上千春

合同会社HRC 人事コンサルタント

井上千春

はじめに

昨今「人的資本の情報開示」などのトレンドもあり、

  • 採用時に適性検査を活用する
  • 人件費を分析する
  • 人事評価データを蓄積する

など、人事データを局所的に活用・蓄積している企業は多いと思います。
一方、目的を持って各データを分析し、人事施策にうまく活かせている企業はまだ少数派でもあると感じています。
本コラムでは、専門的な統計知識や複雑な分析を行わずとも、まずは第一歩として「簡易」に「シンプル」にできる人事データの活用手法をお伝えします。

 

1:【概論】人事データは、どのような場面で、どのように使えるのか?

【人事データ分析の目的】
従業員や組織の状況を定量的に可視化することの目的として、主に以下3点があげられます。

①意思決定の精度向上
環境変化が激しい中では、これまでの「勘や経験」だけでは誤った判断をしてしまう可能性があります。
データ分析により、採用や配置のマッチング精度向上、育成効果の測定など、様々な人事マネジメント領域での意思決定を定量データでサポートすることが可能になります。

従業員への価値提供の向上
多様な従業員の志向・能力などに合わせて、モチベーションや生産性向上を実現するための「最適な配置」「育成プラン」「キャリアパス」等を提供する根拠データとしても活用できます。
また、人的資本の情報開示自体が、企業の採用力や市場からの投資を左右する時代にもなりつつあります。

③業務効率化
代表的な例として、採用時の書類選考のAI判断導入など、膨大に人手がかかっていた作業時間を短縮することが可能になります。

2:【人事データ分析・活用】活用の壁と対策

このように様々な場面で有用な人事データ分析ですが、人事データの分析・活用に当たっての壁(課題)として、よくお伺いするのは以下3点です。

課題1:「分析する人材・知識の不足」

課題2:「データの一元管理」

課題3:「データ活用目的の不明瞭さ」

ここからは、1つ1つの壁(課題)を乗り越えるポイントをお伝えしていきます。

課題1:「分析する人材・知識の不足」

データ分析と聞くと、統計学の知識やスキルが必要そうだと敬遠したり、数字が苦手なので自分には難しいと思われている方も多いのではないでしょうか。
以下のレベル1~3程度のシンプルな分析であれば、Excelのみでも十分実施が可能です。

例えば、簡易な分析の一例として、以下のような散布図を使って入社後の活躍状況(上司評価や業績など)を横軸×入社時の面接評価の高さを縦軸にして、入社者名をプロットするだけでも、様々な示唆が得られます。

簡易分析例(プロット図)

課題2:「データの一元管理」

皆さんの組織には、どのような人事データが存在しているでしょうか?
個別人事情報のデータ化・一元化(人事システムやDBでの管理でなくても、Excel・スプレッドシート等での整理・カテゴリ分類)をしておけば、分析したいタイミングで活用しやすくなります。

主な人事データの種類と活用上のポイント

また、人事データの収集・保管にあたっては、以下のような点もポイントとなります。

ポイント
  • データ管理の方法やルールを決める
    従業員の個人情報などセンシティブなものも多く含まれるので、データの開示範囲や保管方法、セキュリティには注意が必要。マッチングのために、個人別情報にはキー(社員番号)をつけるなど保管方法も工夫。
  • 従業員からデータを集める際は、目的や用途を伝える
    サーベイなどを行う時には、何のための調査かという目的をしっかり伝えないと、バイアスがかかり正しいデータが取得できない可能性。
  • 古いデータや間違ったデータのメンテナンスを怠らない
    使えるデータにするために、入力ミスや表記ゆれのチェックなど地道だが基本的な作業とともに、古すぎて使えないデータの削除・変化したデータの修正などメンテナンスも重要。

課題3:「データ活用目的の不明瞭さ」

何となく分析をしよう、データを活用しようとしても、目的が明確でないと、結果的に分析したデータが意味をなさず、非効率になることも多くあります。使える分析を行うためには、以下のような手順を踏んで「目的」を明確にし、それに沿ってデータを分析することが有効です。

人事データ分析の手順

以下、簡単に各手順のポイントをお伝えします。

①目的・計画の策定
POINT日頃の問題意識や違和感を大切にする
例えば、「採用ルートにより、定着率に違いがある気がする」「営業成績と上司満足度には関係がありそう」等、日頃から何となく持っている感覚値をもとに仮説を立てると、何のために、どのようなデータを分析すべきかが想定しやすくなります。

②データの収集
POINTむやみに多くのデータを分析しても非効率。ある程度の仮説を立てて、ポイントを絞ったデータ収集を行う。

③データの前処理
POINT欠損値や分析に使えない外れ値を確認する
POINT入力値のルールを統一する(年度により評価記号が違う等を揃える等)
当然ですが、データ自体が正しくなければ意味のある分析はできません。数値自体に間違いや表記揺れなどがないか、丁寧なデータ内容の確認が必要です。

④分析を行う
「分けて、見る」「組み合わせて、見る」等、シンプルな手法を活用しながら、目的に沿った分析を行いましょう。
以下は、代表的な分析例です。

⑤分析結果をもとに意思決定を行う
もともと持っていた仮説に照らして、分析結果を解釈し、具体的な打ち手につなげます。

3:最後に

人事データの蓄積・分析により、これまで見えていなかった従業員や組織の状況を可視化することは、人事施策決定の上で有効な手段の1つです。
データ分析・活用の壁を乗り越えながら、ぜひシンプルで手の付けやすい分析から始めてみてください。

【人事データ分析・活用上の主な壁(課題)とポイント まとめ】

課題1:「分析する人材・知識の不足」
まずは第一歩として、既存データを活用しながら、簡易なExcel分析からスタート
課題2:「データの一元管理」
既存人事データの形式などを揃えて分析可能な状態にし、今後も意識的にデータを蓄積・保存
課題3:「データ活用目的の不明瞭さ」
日頃気になっている「問題意識」や「疑問」を起点に、手順を追って分析実施

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この記事を書いた人

井上千春

合同会社HRC 人事コンサルタント

井上千春

京都大学人文学部社会学科卒業。組織・人事コンサルティングの国内最大手HRR(現リクルートマネジメントソリューションスズ)に入社以来、関西で大手~中小まで幅広く通算1000社を超える顧客を営業として担当し、教育研修の企画・提案や、人事制度設計、組織診断の実行支援等を行う。
リクルートキャリアに転籍後、採用領域において九州・沖縄地区の顧客の採用活動支援(適性検査の活用フォロー、採用コンサルティング等)と代理店等パートナーを活用した販促施策の立案・実行を担う。
2016年同社を退職し、組織・人事コンサルタント、ソリューションプランナーとして活動され、2018年9月合同会社HRC(組織・人事コンサルティング、人材育成支援会社)を設立し、九州エリアにおけるベンチャーから大手企業の採用・定着・人材育成、若手~マネジャー研修等、人事コンサルタントとして組織課題の解決を推進。

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