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注目を集める「アルムナイ」とは|企業と退職者の良好な関係性の築き方

注目を集めるアルムナイとは

三市さくら

株式会社ハッカズーク

三市さくら

人生100年時代、雇用の流動化、終身雇用の崩壊、少子高齢化による労働人口の減少など、日本の働き方は過渡期を迎えています。

同時に、個人のライフスタイルや価値観の多様化により、働き方の選択肢が大きく広がる今日、ビジネスパーソンのキャリアの自由度は急速に進んでいます。

個人のキャリアの自由度が高まれば退職者は増えますが、労働人口が減少する中、企業が優秀な人材を新しく採用し続けるのは現実的ではありません。つまり企業にとって「社員の退職が増え、新規での採用が難しくなる」ことは明確です。

そして個人の価値観や人生設計の多様化が進めば、個人と会社の関係も変わるはず。従来の雇い、雇われる関係性から、より対等なものに変わっていくでしょう。そこで注目されているのが、「アルムナイ」です。

アルムナイとは、「卒業生」を表す言葉。人事領域では「企業の卒業生」や「OB/OG」「退職者」を意味します。

再雇用やビジネス協業、企業ブランディング、イノベーションにつながる人材としてアルムナイを捉え、アルムナイネットワーク(退職者とのネットワーク)を企業として公式に作る動きも出てきています。

アルムナイは自社の事業、文化への理解がある外部の人。つまり、他社のノウハウを持ち合わせた即戦力人材です。再雇用や業務委託、副業の場面でスムーズなオンボーディングや成果の再現性に期待ができることから、採用難が続く中で重要性が高まっています。

また、アルムナイは客観的で信頼あるメッセージを発信してくれる存在でもあります。アルムナイと良好な関係を築き、自社のポジティブな口コミを広めてくれるアンバサダーを増やしていくことで、企業認知やブランディグ向上にも期待がもてます。

>> 企業がアルムナイと関係性を築くメリットについて、詳しくはこちら

企業とアルムナイが良好な関係性を築く上でキーとなる「辞め方」

アルムナイネットワークはなくても、元社員が再入社したり、一部仕事を依頼したりといった経験がある企業は少なくないと思います。そのためには企業とアルムナイの良い関係性が不可欠。ポイントとなるのが退職者の「退職時の体験」です。

過去のアンケート調査結果からも、退職時の体験で不快な思いをした人の半数以上が会社への気持ちがマイナスに変化していることがわかっています。

>> 退職者への不誠実な対応は超リスク! 「社員の良い送り出し方」を退職者の声から探る

従業員の自社での体験への印象を左右するのは、在職期間中の最も良い瞬間と、退職時の経験。つまり、在籍中にどれだけ満足度が高かったとしても、退職時の対応がうまくいかなければ「その会社での体験=悪い印象」になってしまいかねないのです。

今まで築いてきた会社との関係性が、退職体験で台無しになってしまうことは、お互いにとって不幸であり悲しいものです。アルムナイとのビジネス協業や再雇用といったチャンスを手放すことにもなりかねません。

そうした不幸を防ぐための施策を「オフボーディング」と言います。これは社員の退職の意思を受け取ってから退職が完了するまでの一連の流れの中で、退職者の退職体験向上を目的として行われるもの。

オフボーディングの改善は、辞める人だけでなく、現社員にもプラスの影響があります。退職者から引き出した本音を基に職場環境を改善することは、現社員の働きやすさや満足度アップにつながるのです。

>> オフボーディングのメリットの詳細はこちら

オフボーディングの取り組み方

オフボーディングで一番重要なのは、退職を切り出した社員と上司との面談です。そのポイントを見てみましょう。

ポイント1. 話を聞き、退職意思を尊重する

パーソル総合研究所の調査結果によると、「思いの引き出し」が退職体験を左右する大きな要因。いきなり退職を認めるのではなく、相手の意志を尊重しつつ「なぜその考えに至ったのか」という背景を聞き出すことが重要です。

>> コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査

また、退職を切り出す人の多くは、上司との退職面談に重い気持ちで臨んでいます。その前提を理解した上で話をする姿勢も大切です。

ポイント2. 適度に引き留める

退職を切り出した社員の心情として、全く引き留められないことが逆にネガティブな体験となる可能性もあります。まずは話してくれた内容を受け止め、退職意思の否定とならないよう配慮をしながら、退職理由の解決策とともに引き留めを行うのが理想的です。

ポイント3. 応援の姿勢を見せる

退職の意思を受け止め、今後の活躍を応援した上で、「またいつか一緒に働きましょう」「いつでも戻っておいで」という言葉があると素直に嬉しいもの。こうした一言が退職してアルムナイになってから先の信頼関係を築くベースとなります。

ポイント4.  面談相手を変える

関係性が深ければ深いほど、退職面談で本音は言いにくいことも。その場合は人事や過去の上司など、立場が違う人との面談を設定するのも一つの手です。「人事担当者として率直な意見を聞いて、組織改善に生かしたい」と誠実に伝えれば、相手も話しやすくなります。

ポイント5.  退職後に面談を組む

退職を切り出す社員の多くは円満退職を望んでいます。例えば、退職理由が人間関係や給与への不満などの場合は本音を切り出しにくいもの。波風を立てずに去りたいという気持ちから、「一身上の都合」として集約されてしまうことも。

その際は退職後にフォローアップ面談を設定するのが効果的です。「会社と従業員」という関係性ではなくなったことで、本音を話しやすくなります。

中小企業におけるアルムナイネットワーク

今までは、従業員数が多い(アルムナイが多い)大手企業を中心にアルムナイネットワークの導入が進んでいましたが、最近では数百人規模の中小企業からのお問い合わせも増えています。

例えば、福岡県北九州市の総合不動産企業・大英産業株式会社が、2021年6月に当社のアルムナイ特化システム『Official-Alumni.com』を導入し、アルムナイネットワークを立ち上げました。当社が知る限り、九州企業初の企業公式アルムナイネットワークです。

>> 北九州の不動産企業・大英産業がアルムナイネットワークを開始「理念の実現には退職者とのつながりが必要」

地元や地域企業との連携を強化し、従業員の視野を広げ外部とのつながりを作る一環としてスタートした大英産業のアルムナイネットワーク。その背景には、業界全体をアルムナイと一緒に盛り上げていきたいという気持ちがあります。

また、アルムナイがかつては一緒に働いた人である事実は、たとえ会社を離れても変わりません。雇用関係がなくなったとしても、関係性は同じであることの意思表明の手段としてアルムナイネットワークを用いています。

地域への愛着や地元とのネットワークが強いという地域企業の特徴は、アルムナイネットワークにもプラスに働きます。退職しても同じ地域にいることが多く、また同じ業界や近しい産業に転職する人も多いため、再雇用やビジネスマッチングなど可能性の広がりにより期待が持てます。

具体的にはアルムナイのポジティブな意見やコメントが親和性の高い人たちに届きやすいというメリットです。会社全体として取り入れる前に、まずは部署を限定してトライアルで始めてみるのも一つの手。実際に、まずは事業部単位でアルムナイとの交流を行い、そこから企業全体としての取り組みへと広げていくケースも存在します。

最後に

アルムナイの取り組みは単なる施策ではなく、企業と個人の関係性や、企業の個人への向き合い方を表すもの。世の中の労働環境が大きく変わる中、企業は個人との関係性を再考するタイミングが来ています。まずは自社での従業員の退職との向き合い方、送り出し方から見直してみてはいかがでしょうか?

今日のポイント
  • アルムナイの取り組みは、企業と個人との関係性を表すもの
  • 従業員は未来のアルムナイ。自社での体験は、在籍時と退職時、両輪でつくられる
  • 地域企業の特徴はアルムナイネットワークにプラスとなる

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この記事を書いた人

三市さくら

株式会社ハッカズーク

三市さくら

大学を卒業後、転職エージェントとして外資コンサルティング企業、大手メーカーなどを中心に採用支援を行う。その後、フルリモートで組織運営する株式会社キャスターにて採用代行事業のカスタマーサクセスとして50社以上の採用に携わるほか、サービス開発にも従事。現在はハッカズークにて、アルムナイ特化システム『Official-Alumni.com』のカスタマーサクセスとして上場企業を中心としたアルムナイネットワーク構築支援を担当する。
株式会社ハッカズーク ホームページ
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